ぼくと攻城団の11年間

11歳といえば小学校5年生くらいですかね。
子どもがいないぼくにとって、攻城団は文字通り我が子のような存在です。11年もやっていると良いことも悪いこともたくさんありましたが、それは子育ても同じですよね。知らんけど。
どんな経験でも攻城団をはじめなければ得られなかったわけで、そう考えると経験できたこと自体ありがたいなと思いますし、チャレンジした自分へのご褒美とも言えます。
子どもと同じように、いつかぼくの手から離れていくことを覚悟しつつ、その日が来るまでは責任を持って育てようと今日あらためて思いました。

さて、いまのインターネットはSNSはじめ負の感情であふれ、問題ばかり起きています。ぼくはそれがとても残念です。
30年ほど前、大学生のぼくが衝撃を受けたパソコン通信、そしてその数年後に普及したインターネットの可能性は、隠れた名店や無名だけど優れたコンテンツが誰かによって発見・共有され、良いものが正当に評価される世界でした。
もちろん悪いことをする人は当時からいましたが、それでも善意が過半を占めていました。しかしいまはどう贔屓目に見ても悪意が勝っています。
誰かを馬鹿にしたり、コンテンツをこき下ろしたり、ウソをついてでも注目を集めたほうが得をする――、つまり損得が持ち込まれてしまったのです。

攻城団について団員のみなさんからいただく評価として「居心地がいい」という表現がよくあります。
誰が最初に言ってくれたのかはおぼえていないのですが、団員総会などの場でかなりの方から直接言われました。メールではその何倍も受け取っています。
おそらくこうした評価をいただく理由のひとつに「損得を持ち込まない」ということがあるのではないかと思いました。

じつは損得というのは人間のモチベーションを高めるうえで非常に有効です。損したくないから○○する、得するから○○しよう、という感情は極めて自然ですし、運営者側からすると扱いやすいものです。
しかしそれは別の誰かを出し抜いたり、あるいはほかから搾取することと同義です。
「いまなら1万円キャッシュバック!」の裏では過去の、あるいは未来の利用者からその損失を補填する計算があり、「他社からの乗り換えなら入会金無料!」は長年愛用してきた利用者への敬意を欠いています。

そんなわけでいまさら自覚しましたが、攻城団が掲げる「ゆるやかなギブ・アンド・テイク」というスローガンは、損得をなくそうとする考え方です。
誰かがギブしてくれた情報で助けられたなら、今度は自分が別の誰かのために情報をギブしよう――そしてそれはギブしてくれた人に直接返すのではなく、攻城団という場(サービス)に対して返すことで、AさんはBさんに、BさんはCさんに、となんだかんだでみんなが誰かの役に立っているという状態を理想としています。
AさんとBさん、ふたりの当事者間ギブ・アンド・テイクならギブの多い少ないといった損得も生まれますが、サービスを中心にした多対多の、しかも長期的な関係でのギブ・アンド・テイクには損得が入る隙間がありません。

後づけの説明ですし、こんなことまで考えて使い出したスローガンではありませんが、だからこそぼくの理想が反映されているとも言えます。攻城団の魂というか。
攻城団の将来を考えたとき、この「居心地の良さ」をどうすれば維持できるのか、ぼくが団長を引退しても変わらずにいられるのかが心配でしたが、ひとつヒントに気づいた気がします。
「居心地の良さ」は結果でしかないので、その状態を作るために「損得を持ち込まない」を意識していくというのは今後の良い指針になりそうです。

過去にもインタビューで答えてきたように、もともと攻城団は老後の暇つぶしとして、生涯楽しめる大人の趣味探しから始まりました。
つまり城めぐりそのものが暇つぶしの手段であり、ライフワークだったのですが、いまは攻城団の運営がぼくのライフワークになっています。でもそれはぜんぜんイヤではなくて、むしろ幸せなことだと感謝しています。
これからもみんなが公平に損も得もせず、お互いを尊重しあえるサイトに育てていきますので、12年目の攻城団もどうぞよろしくお願いいたします。

2025年4月6日
攻城団 団長
こうのたけし

11周年ロゴグッズ

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11周年記念ライブ

4月6日(日)に攻城団テレビで生配信しました。アーカイブをご覧ください。